教育法規6-(10)「体罰」

法規

 「体罰」とはどのような行為か。また、体罰を行った場合、どのような責任を問われるのか述べなさい。

「体罰」とは

(1)定義
 教員等が児童生徒に対して行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に勧化、個々の事案ごとに判断する必要があり、その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る、蹴る等)、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合は、体罰に該当する。「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)」平成19年2月5日初等中等教育局長通知(18文科第1019号)―学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方より-

(2)「体罰」の禁止について
【学校教育法第11条】
「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」

【問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)】
平成19年2月5日初等中等教育局長通知(18文科第1019号)


懲戒・体罰について

  1. 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、児童生徒に懲戒を加えることができる。しかし、一時の感情に支配されて、安易な判断のもとで懲戒が行われることがないように留意し、家庭との十分な連携を通じて、日頃から教員等、児童生徒、保護者間で信頼関係を築いておくことが大切である。
  2. 体罰がどのような行為なのか、児童生徒への懲戒がどの程度まで認められるかについては、機械的に判定することが困難である。また、このことがややもすると教員等が自らの指導に自信を持てない状況を生み、実際の指導において過度の萎縮を招いているとの指摘もなされている。ただし、教員等は、児童生徒への指導に当たり、いかなる場合においても、身体に対する侵害(殴る、蹴る等)、肉体的苦痛を与える懲戒(正座、直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならない。体罰による指導により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童性に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがあるからである。
  3. 懲戒権の限界及び体罰の禁止については、これまで「児童懲戒権の限界について」(昭和23年12月22日付け法務長法務調査意見長官回答)等が過去に示されており、教育委員会や学校でも、これらを参考として指導を行ってきた。しかし、児童生徒の問題行動は学校のみならず社会問題となっており、学校がこうした問題行動に適切に対応し、生徒指導の一層の充実を図ることができるよう、文部科学省は、懲戒及び体罰に関する裁判例の動向等も踏まえ、今後、「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」を取りまとめた。懲戒・体罰に関する解釈・運用については、今後、この「考え方」によることとする。

【学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方】
「文部科学省初等中等教育局(体罰について)資料4-2」


体罰について

  1. 児童生徒への指導に当たり、学校教育法第11条ただし書にいう体罰は、いかなる場合においても行ってはならない。教員等が児童生徒に対して行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。
  2. 1により、その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る、蹴る等)、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒(正座・直立等徳的の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合は、体罰に該当する。
  3. 個々の懲戒が体罰に当たるか否かは、単に、懲戒を受けた児童生徒や保護者の主観的な言動により判断されるのではなく、上記(1)の諸条件を客観的に考慮して判断されるべきであり、特に児童生徒一人一人の状況に配慮を尽くした行為であったかどうか等の観点が重要である。
  4. 児童生徒に対する有形力(目に見える物理的な力)の行使により行われた懲戒は、その一切が体罰として許されないというものではなく、裁判例においても、「いやしくも有形力の行使と見られる外形をもった行為は学校教育法上の懲戒行為としては一切許されないとすることは、本来学校教育法の予想するところではない」としたもの(昭和56年4月1日東京高裁判決)、「生徒の心身の発達に応じて慎重な教育上の配慮のもとに行うべきであり、このような配慮のもとに行われる限りにおいては、状況に応じ一定の限度内で懲戒のための有形力の行使が許容される」としてもの(昭和60年2月22日浦和地裁判決)などがある。
  5. 有形力の行使以外の方法により行われた懲戒については、例えば、以下のような行為は、児童生徒に肉体的苦痛を与えるものでない限り、通常体罰には当たらない。○放課後等に教室に残留させる(用便のためにも室外に出ることを許さない、又は食事時間を過ぎても長く留め置く等肉体的苦痛を与えるものは体罰にあたる。)
    ○授業中、教室内に起立させる。
    ○学習課題や清掃活動を課す。
    ○学校当番を多く割り当てる。
    ○立ち歩きの多い児童生徒叱って席につかせる。
  6. なお、児童生徒から教員等に対する暴力行為に対して、教員等が防衛のためにやむを得ずした有形力の行使は、もとより教育上の措置たる懲戒行為として行われたものではなく、これにより身体への侵害又は肉体的工夫を与えた場合は体罰には該当しない。また、他の児童生徒に被害を及ぼすような暴力行為の行使についても、同様に体罰に当たらない。これらの行為については、正当防衛、正当行為等として刑事上又は民事上の責めを免れうる。

「体罰」で問われる責任

  1. 刑事上の責任
    刑法による刑罰を科せられる等、刑法上の責任のこと。
    学校教育法で認められた懲戒であるかぎり、一般的には刑法の条項に該当するような行為であっても、刑法35条により違法性を阻却され犯罪は成立しないが、懲戒の限度をこえた場合には、刑法上の罪(障害罪、暴行罪、監禁罪、脅迫罪、強要罪等)に問われることがある。
  2. 民事上の責任
    賠償請求等の民法上の責任のこと。
    体罰により、身体への障害、身体的精神的苦痛を与えたことへの責任が問われ、損害賠償の責任(民法709条)が追求される合がある。また、このような場合には、監督者として校長も責任を追及される(民法715条)こともある。更に、公立学校の場合、国家賠償法1条の定めるところにより地方公共団体が賠償責任を追及されることのもある。
  3. 行政上の責任
    公務員として秩序維持のために課せられる責任のこと。
    職務上の義務に違反したとして、懲戒処分の対象になることがある。また、校長も監督者として責任を問われ懲戒処分の対象となる場合がある。

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