教育法規9-(6)「原級留置」

法規

 児童生徒の「原級留置」について述べなさい。

原級留置

 原級留置とは、各学年において課せられた各教科の学習効果が進級させるために十分ではないと校長が判断した場合、原学年に留め置く措置である。

進級・卒業

 各学年の過程の修了認定を受け、上級学年に進むことを「進級」といい、所定の修業年限にわたって在学し、所定の全課程を修了したことを「卒業」という。進級・卒業の認定は学校教育法施行規則第57条、79条に定めがある。

【学校教育法施行規則第57条】
「小学校において、各学年の課程の修了又は卒業を認めるに当たっては、児童の平素の成績を評価して、これを定めなければならない。」

【第79条】
「第41条から第49条まで、第50条第2項、第54条から第68条までの規定は、中学校に準用する。」

原級留置の認定

【公立小中学校管理規則第7条第1条】
「校長は、児童生徒の平素の成績を評価して、その学年の課程の修了又は卒業を認めることができないと判定したときは、当該児童生徒を原学年に留め置くことができる。」

【同2条】
「校長が前項の処置を行ったときは、その状況を速やかに教育委員会に報告しなければならない。」

原級留置の適用

 原級留置の判断基準は、通常「成績」や「出席日数」が考慮の対照となる。

 「成績」に関して

【学校教育法施行規則第54条】
「児童が心身の状況によって履修することが困難な各教科は、その児童の心身の状況に適合するように課さなければならない。」とある。
 つまり、すべての子どもに共通した教育課程があるのではなく、児童生徒の心身に即した個別的な教育課程も存在すると考えられる。したがって「成績」のみが原級留置の判断基準とはなりにくい。

「出席日数」に関して

【課程の修了又は卒業の認定等について 昭28、3、12 委初28 兵庫県教育委員会教育長あて文部省初等中等教育局長回答】
「学校教育法施行規則第28条の規定により、卒業の認定は校長が行う。校長が学校の規定した総授業時数に満たない生徒についても適当な方法でその成績を評価することにより卒業を認定することは、あり得ることである。しかし、一般的にいって、第3学年の総授業時数の半分以上も欠席した生徒については、特別の事情のない限り、卒業の認定は与えられないのが普通であろう。照会文の当該中学校の場合は、照会文だけでは事情が明瞭でないが、その事情に即して処置されたい。」と示されている。

 しかし、【学校教育法第17条第2項】には、「保護者は、子が小学校の課程、義務教育学校の課程を修了した日の翌日以降における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中等部に就学させる義務を負う。」とある。つまり、満15歳を超えて原級に留まった場合にも、保護者の就学義務が延長されるとはならないと考えられる。

 義務教育の課程を修了しないまま社会に出ることは、児童生徒にとって著しく不利益となる。本来、成績不良や長期欠席等の事由により校長の判断で原級留置ができるが、現在では、公立小中学校において原級留置の措置はあまり行われていない。もし、原級留置を適用する際は、以下のことに留意する必要がある。

  1. 教育委員会と緊密な連携のもとに対処する。
  2. 判定に必要且つ適切な資料が用意されている。
  3. 保護者の理解と児童生徒の同意を得る。

● 課程の修了又は卒業の認定等について 昭和28年3月12日 委初28 (chobi.net)

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