「教育課程」について、法令上どのように規定されているのか。また、教育課程編成の根拠を述べなさい。
法令上の規定
小中学校において編成する教育課程とは、「学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を児童生徒の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画のことである。」【県小中学校教育課程編成要領】
教育課程の編成・実施・評価・改善に当たっては、法令等の規定に依拠し、適切に行う必要がある。
【日本国憲法第26条】
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」
【教育基本法】
教育の目的(第1条)
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
教育の目標(第2条)
「教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。」
- 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
- 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
- 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
- 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
- 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
義務教育(第5条)
- 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
- 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
- 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
- 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
学校教育(第6条)
- 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
- 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
【学校教育法】
普通教育の目標(第21条)
「義務教育として行われる普通教育は、教育基本法第5条第2項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。」
- 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
- 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
- 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
- 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
- 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
- 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
- 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
- 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
- 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
- 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
小中学校の目的(第29条、第45条)
「小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。」
「中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。」
小中学校の目的(第30条、第46条)
「小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第21条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。」
「前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。」
《学力の3要素》
「中学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、第21条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。」
教育課程(第33条、48条)
「小学校の教育課程に関する事項は、第29条及び第30条の規定に従い、文部科学大臣が定める。」
「中学校の教育課程に関する事項は、第45条及び第46条の規定並びに次条において読み替えて準用する第30条第2項の規定に従い、文部科学大臣が定める。」
学校教育法施行規則
教育課程の内容(第50条、第72条)
「小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育及び外国語の各教科、特別の教科である道徳、外国語活動、総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする。」
「中学校の教育課程は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭及び外国語の各教科、特別の教科である道徳、総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする。」
教育課程の時数(第51条、第73条)
「小学校の各学年における各教科、特別の教科である道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの授業時数並びに各学年におけるこれらの総授業時数は、別表第1に定める授業時数を標準とする。」
「中学校の各学年における各教科、特別の教科である道徳、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの授業時数並びに各学年におけるこれらの総授業時数は、別表第2に定める授業時数を標準とする。」
教育課程の基準(第52条、第73条)
「小学校の教育課程については、この節に定めるもののほか、教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする。」
「中学校の各学年における各教科、特別の教科である道徳、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの授業時数並びに各学年におけるこれらの総授業時数は、別表第2に定める授業時数を標準とする。」
地方教育行政の組織及び運営に関する法律
教育委員会の権限(第21条)
「教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。」
- 教育委員会の所管に属する第30条に規定する学校その他の教育機関の設置、管理及び廃止に関すること。
- 教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の用に供する財産の管理に関すること。
- 教育委員会及び教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。
- 学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。
- 教育委員会の所管に属する学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。
- 教科書その他の教材の取扱いに関すること。
- 校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。
- 校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。
- 校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。
- 教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の環境衛生に関すること。
- 学校給食に関すること。
- 青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。
- スポーツに関すること。
- 文化財の保護に関すること。
- ユネスコ活動に関すること。
- 教育に関する法人に関すること。
- 教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関すること。
- 所掌事務に係る広報及び所掌事務に係る教育行政に関する相談に関すること。
- 前各号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること。
学校等の管理(第33条)
「教育委員会は、法令又は条例に違反しない限りにおいて、その所管に属する学校その他の教育機関の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱いその他の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものとする。この場合において、当該教育委員会規則で定めようとする事項のうち、その実施のためには新たに予算を伴うこととなるものについては、教育委員会は、あらかじめ当該地方公共団体の長に協議しなければならない。」
②「前項の場合において、教育委員会は、学校における教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、教育委員会に届け出させ、又は教育委員会の承認を受けさせることとする定めを設けるものとする。」
③「第23条第1項の条例の定めるところにより同項第1号に掲げる事務を管理し、及び執行することとされた地方公共団体の長は、法令又は条例に違反しない限りにおいて、特定社会教育機関の施設、設備、組織編制その他の管理運営の基本的事項について、必要な地方公共団体の規則を定めるものとする。この場合において、当該規則で定めようとする事項については、当該地方公共団体の長は、あらかじめ当該地方公共団体の教育委員会に協議しなければならない。」
文部科学大臣又は都道府県委員会の指導、助言及び援助(第48条)
- 地方自治法第245条の4第1項の規定によるほか、文部科学大臣は都道府県又は市町村に対し、都道府県委員会は市町村に対し、都道府県又は市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができる。
- 前項の指導、助言又は援助を例示すると、おおむね次のとおりである。
一学校その他の教育機関の設置及び管理並びに整備に関し、指導及び助言を与えること。
二学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導、職業指導、教科書その他の教材の取扱いその他学校運営に関し、指導及び助言を与えること。
三学校における保健及び安全並びに学校給食に関し、指導及び助言を与えること。
四教育委員会の委員及び校長、教員その他の教育関係職員の研究集会、講習会その他研修に関し、指導及び助言を与え、又はこれらを主催すること。
五生徒及び児童の就学に関する事務に関し、指導及び助言を与えること。
六青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育の振興並びに芸術の普及及び向上に関し、指導及び助言を与えること。
七スポーツの振興に関し、指導及び助言を与えること。
八指導主事、社会教育主事その他の職員を派遣すること。
九教育及び教育行政に関する資料、手引書等を作成し、利用に供すること。
十教育に係る調査及び統計並びに広報及び教育行政に関する相談に関し、指導及び助言を与えること。
十一教育委員会の組織及び運営に関し、指導及び助言を与えること。
【公立小中学校等管理規則】
教育課程の編成・実施(第4条)
- 学校は、学習指導要領の基準及び埼玉県小中学校教育課程編成要領により、教育課程を定めなければならない。
- 校長は、その年度において実施すべき教育課程のうち次に掲げるものについては、4月末日までに教育委員会に届け出るものとする。
(1)学校の教育目標及び重点目標
(2)年間授業日数、授業時数及び日課表
(3)各教科、特別の教科 道徳、外国語活動(小学校)、総合的な学習の時間、特別活動についての指導の方針及び年間指導計画 - 学校は、第1項に規定する教育課程の実施に当たっては、その配当時間を確保し、有効適切な指導を図って教育効果の増進に努めなければならない。
教育課程編成の根拠
学校教育法では、幼・小・中・高等学校それぞれの目的や目標が定められ、更に教科に関する事項は、文部科学大臣がこれを定めると規定している。これを受け、同施行規則では、各教科等や授業時数等に教育課程に関する基本的な事項を定めるとともに、教育課程の編成に当たっては、その基準として公示する学習指導要領によると定められている。学習指導要領は、公の性格を有する学校教育において、教育の機会均等を確保する必要から設けられているものである。学習指導要領では、最低基準性(すべての学校、すべての教員、すべての生徒に指導すべき内容)がより明確となった。学習の充実には計画的な指導と授業時数の確保が不可欠である。教育課程における質と量の管理は児童生徒の学習を保障するうえで重要な役割を果たしている。
公立小中学校管理規則:教育指導計画の作成
「学校は、学習指導要領の基準及び県小中学校教育課程編成要領により、教育指導計画を定めなければならない。」と規定し、作成の拠り所を明示している。
小中学校学習指導要領総則第1の1
「各学校において(略)適切な教育課程を編成するものとする」と規定されることから、教育課程の編成の主体は各学校であり、その最終責任者(編成権)は校長にあると解釈される。」
校長の職務
【学校教育法第37条第4項】
「校長は校務をつかさどり、所属職員を監督する。」
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