教育法規10-(9)「児童生徒の就労」

法規

 児童生徒の就労について述べなさい。

児童生徒の保護の観点

 【日本国憲法第27条第1項】には、「勤労の権利と義務」、【第3項】と【学校教育法第20条】には「児童酷使の禁止」が規定されている。また、【児童福祉法第1条】では、すべての児童の「適切な養育」「生活を保障」「愛され、保護される」ことの権利保障が謳われている。これらの観点より、小中学生のタレント活動等、児童生徒の就労には、多くの法律上の規制がなされている。

【日本国憲法第27条第1項】
「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」

【第3項】
児童は、これを酷使してはならない。」

【学校教育法第20条】
「学齢児童又は学齢生徒を使用する者は、その使用によって、当該学齢児童又は学齢生徒が、義務教育を受けることを妨げてはならない。」

【児童福祉法第1条】
「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」

就学者の年齢制限

 15歳未満の児童を労働者として使用することは、【労働基準法第56条第1項】において原則禁止とされている。しかし、【同法第2項】には、例外措置が定められている。

【労働基準法第56条第1項】
使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。

【第2項】
前項の規定にかかわらず、別表第1第1号から第5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする。」

労働時間の制限

【労働基準法第60条第3項】において満15歳以上で満18歳未満の児童の定めがある。

【労働基準法第60条第3項】
「使用者は、第32条の規定にかかわらず、満15歳以上で満18歳に満たない者については、満18歳に達するまでの間、次に定めるところにより、労働させることができる。

  1. 1週間の労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を10時間まで延長すること。
  2. 1週間について48時間以下の範囲内で厚生労働省令で定める時間、1日について8時間を超えない範囲内において、第32条の2又は第32条の4及び第32条の4の2の規定の例により労働させること。

使用許可

【労働基準法第57条第1項】
「使用者は、満18才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。

【第2項】
「使用者は、前条第2項の規定によって使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。」

危険有害業務の就業制限

【労働基準法第62条第1項】
「使用者は、満18才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。」

【第2項】
使用者は、満19才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。」

【第3項】
「前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。」

【年少者労働基準規則第8条】
「法第62条第1項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第2項の規定により満18歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。ただし、第41号に掲げる業務は、保健師助産師看護師法により免許を受けた者及び同法による保健師、助産師、看護師又は准看護師の養成中の者については、この限りでない。

  1. ボイラーの取扱いの業務
  2. ボイラーの溶接の業務
  3. クレーン、デリック又は揚貨装置の運転の業務
  4. 緩燃性でないフィルムの上映操作の業務
  5. 最大積載荷重が2トン以上の人荷共用若しくは荷物用のエレベーター又は高さが15メートル以上のコンクリート用エレベーターの運転の業務
  6. 動力により駆動される軌条運輸機関、乗合自動車又は最大積載量が2トン以上の貨物自動車の運転の業務
  7. 動力により駆動される巻上げ機、運搬機又は索道の運転の業務
  8. 直流にあっては750ボルトを、交流にあっては300ボルトを超える電圧の充電電路又はその支持物の点検、修理又は操作の業務
  9. 運転中の原動機又は原動機から中間軸までの動力伝導装置の掃除、給油、検査、修理又はベルトの掛換えの業務
  10. クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務
  11. 最大消費量が毎時400リットル以上の液体燃焼器の点火の業務
  12. 動力により駆動される土木建築用機械又は船舶荷扱用機械の運転の業務
  13. ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂のロール練りの業務
  14. 直径が25センチメートル以上の丸のこ盤又はのこ車の直径が75センチメートル以上の帯のこ盤に木材を送給する業務
  15. 動力により駆動されるプレス機械の金型又はシヤーの刃部の調整又は掃除の業務
  16. 操車場の構内における軌道車両の入換え、連結又は解放の業務
  17. 軌道内であって、ずい道内の場所、見通し距離が400メートル以内の場所又は車両の通行が頻繁な場所において単独で行う業務
  18. 蒸気又は圧縮空気により駆動されるプレス機械又は鍛造機械を用いて行う金属加工の業務
  19. 動力により駆動されるプレス機械、シヤー等を用いて行う厚さが8ミリメートル以上の鋼板加工の業務
  20. 削除
  21. 手押しかんな盤又は単軸面取り盤の取扱いの業務
  22. 岩石又は鉱物の破砕機又は粉砕機に材料を送給する業務
  23. 土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが5メートル以上の地穴における業務
  24. 高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務
  25. 足場の組立、解体又は変更の業務。
  26. 胸高直径が35センチメートル以上の立木の伐採の業務
  27. 機械集材装置、運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務
  28. 火薬、爆薬又は火工品を製造し、又は取り扱う業務で、爆発のおそれのあるもの
  29. 危険物を製造し、又は取り扱う業務で、爆発、発火又は引火のおそれのあるもの
  30. 削除
  31. 圧縮ガス又は液化ガスを製造し、又は用いる業務
  32. 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、シアン化水素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  33. 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  34. 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  35. ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
  36. 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  37. 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  38. 異常気圧下における業務
  39. さく岩機鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務
  40. 強烈な騒音を発する場所における業務
  41. 病原体によって著しく汚染のおそれのある業務
  42. 焼却、清掃又はと殺の業務
  43. 刑事施設又は精神科病院における業務
  44. 酒席に侍する業務
  45. 特殊の遊興的接客業における業務
  46. 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣が別に定める業務

賃金の受け取り

【労働基準法第59条】
「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取つてはならない。」

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