教育法規11-(2)「自立活動」

法規

 特別支援学校及び特別支援学級・通級による自立活動について、個別の指導計画の作成にも触れながら述べなさい。

自立活動

 自立活動とは、個々の障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とした特別支援学校に於いて特別に設けられた領域である。特別支援学校の目的については、【学校教育法第72条】に示されている。その条文の後半に示されている「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授ける」が自立活動として行われる指導となる。

 特別支援学校あるいは通級による指導においても、特別の教育課程を編成する場合には、特別支援学校の学習指導要領を参考にし、自立活動を取り入れることとなる。

 この自立活動は、授業時間を特設して行う「自立活動の時間」における指導を中心とし、各教科等の指導においても、自立活動の指導と密接な関連を図って行われなければならない。

自立活動と個別の指導計画の作成

 自立活動の指導は、個々の児童生徒の障害の状態や発達の段階等に即して行うことが基本である。そのため、自立活動の指導当たっては、個々の児童生徒の実態を的確に把握し、個別に指導の目的や具体的な指導内容を定めた個別の指導計画が作成される。

 自立活動の内容は、人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素と、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素で構成されており、6区分(健康の保持、心理的な安定、人間関係の形成、環境の把握、進退の動き、コミュニケーション)の下に26項目示されている。

 自立活動の指導に当たっては、個々の児童生徒の障害の状態や発達段階等の的確な把握に基づき、指導の目標及び指導内容を明確にし、個別の指導計画を作成する。その際、上記の内容の中からそれぞれに必要とする項目を選定し、それらを相互の関連づけ、具体的に指導内容を設定する。

指導計画の作成手順

  1. 個々の児童生徒について、障害の状況、発達や経験の程度、興味関心、生活や学習環境などの実態を的確に把握する。
  2. 実態把握に基づき、長期的及び短期的な観点から指導の目標を設定し、それらを達成するために必要な指導内容を段階的に取り上げる。
  3. 児童生徒が興味を持って主体的に取組、成就感を味わうとともに自己を肯定的に捉えることがきるような指導内容を取り上げる。
  4. 児童生徒が、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服しようとする意欲を高めることができるような指導内容を重点的に取り上げる。
  5. 児童生徒の発達の進んでいる側面を更に伸ばすことによって、遅れている側面を補うことができるような指導内容も取り上げる。
  6. 児童生徒が活動しやすいように自ら環境を整えたり、必要に応じて周囲のヒトに支援を求めたりすることができるような指導内容も計画的に取り上げる。
  7. 児童生徒の学習の状況や結果を適切に評価し、「個別の指導計画」や具体的な指導の改善に生かすよう努める。

 県では、個別の教育支援計画の中に、個別の指導計画の機能を取り込んだ「教育支援プランA(個別の教育支援計画)」と「教育支援プランB(個別の支援計画)」を取り入れている。これは、特別な教育ニーズとともに本人及び保護者の願いを根幹として作成する総合的な教育計画であり、本人・保護者の参画を得て、マネージメントサイクルを取り入れて改善を図っていくものである。

【学校教育法第72条】
「特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。」

【特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(第7章)自立活動】

  1. 健康の保持
    (1)生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。
    (2)病気の状態の理解と生活管理に関すること。
    (3)身体各部の状態の理解と養護に関すること。
    (4)健康状態の維持・改善に関すること。
  2. 心理的な安定
    (1)情緒の安定に関すること。
    (2)状況の理解と変化への対応に関すること。
    (3)障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること。
  3. 人間関係の形成
    (1)他者とのかかわりの基礎に関すること。
    (2)他者の意図や感情の理解に関すること。
    (3)自己の理解と行動の調整に関すること。
    (4)集団への参加の基礎に関すること。
  4. 環境の把握
    (1)保有する感覚の活用に関すること。
    (2)感覚や認知の特性への対応に関すること。
    (3)感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。
    (4)感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること。
    (5)認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること。
  5. 身体の動き
    (1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。
    (2)姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。
    (3)日常生活に必要な基本動作に関すること。
    (4)身体の移動能力に関すること。
    (5)作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。
  6. コミュニケーション
    (1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること。
    (2)言語の受容と表出に関すること。
    (3)言語の形成と活用に関すること。
    (4)コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。
    (5)状況に応じたコミュニケーションに関すること。
特別支援学校小学部・中学部学習指導要領 第7章 自立活動:文部科学省

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